2018年2月号 医師になる覚悟

更新日:2018/02/14

   教師をしていた父はおそらく僕を教師にしたかったのだろう。現役で合格した有名大学に進学しなかった僕に、父は何も言わなかった。あのまま進学していたら、僕は教師か研究者になっていたのだろう。それもまたひとつの人生だったと思う。しかし障害を持った兄の存在が、僕を医師へと向かわせた。高校3年7月に全国模試で校内1位になった僕は医学部現役合格が現実問題になってきた。これは高校の先輩や医学部に進学した弟の成績から考えて決して過大評価ではなかったと思います。ではなぜ僕は長い浪人生活を歩んだのか?当時の僕は医師になって多くの人を救いたいという気持ちとは別に、身体が不自由な人を差別する人を見返してやろう、兄をバカにするなよという強い憤りがあり、また自分もいじめにあわないように、勉強、スポーツどんな勝負にも貪欲に勝利を目指した。僕は自分や家族を守るためだけに医師になろうとしていたのではないか?自分が優秀なことを人に認めさせるために医学部に入学したいだけではないのか?すべては私心ではないのか?そうした自分を17歳の僕は強く責めた。自分はたとえ医学部に合格できる学力があっても、医師になってはいけないんだ。もっと立派な人物が医師になるべきではないのか?でも医師になることも諦めきれない。当時の僕は自分がどう生きていくか考える時間が必要だった。僕はなんとか医学部を受けないですむ理由をあれこれ考えたが、他に自分の人生をかけられるものは見つからなかった。そしてそれは自分に課せられた使命から逃げることだった。医学部を目指す受験生や家族の悩みのほとんどが学力と学費だろう。そういった悩みとは異質な悩みを抱えていた僕は考えみると、贅沢だろう。自分の弱さを克服し、医師になる覚悟をもつのに必要な浪人期間だった。多くの医学部志願者は医学の光の部分に憧れて入学するのだろうが、光があれば影がある。現在も治らない病気はあるし、人は最終的には亡くなる。どんな名医も無力でしかない状況が存在する。それをわかったうえで、僕は医学部に入学した。

   人にはそれぞれ天命というものがあって、毎日を精一杯頑張っていると、不思議と何らかの力が働いて、自分に適した道に導かれるのだろう。回り道をしたかのように思えた僕の人生も、実は無駄な経験はひとつもなかったのだ。今僕は自分に課せられた使命がはっきりと見えている。自分に与えられた能力を私利私欲のためだけに、使わないことだ。世のため、人のため社会貢献が進むべき道と肝に命じている。

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