2023年3月号　100%全員が好きになったヌートバー

　TV中継が軒並み高視聴率で注目を集めるWBCですが、インターネットで「100%全員が好きになったヌートバー」という記事を読みました。ここでいう100%という数字は政治家が選挙に絶対出馬しないということを強調するために出馬は1万%ないと述べたり、格闘家が勝利に自信があったり、対戦相手を挑発する目的で200%勝てると発言することと同様に、それだけヌートバー選手がナイスガイであることを強調するための表現です。
　そこで大谷翔平選手の好き嫌いというインターネット投票を調べてみたところ意外な結果でした。個人的には現在日本人で最も好感度が高い人物の1人と考えますが、なんと好き56%に対して嫌いが44%でした。選手として数字で測れる実力はもちろんのこと、人柄的にも高い評価を得ているはずですから他人の評価、好き嫌いというものは様々なのだと思いました。
　一般に認知度が低い段階や、本人の露出が少ない場合には一時的に高い好感度を保てる場合があると思います。またごくごく限られたコミュニティーで皆の利害関係が一致している場合には高い好感度も可能かもしれません。インターネットの普及により、広く認知されてくると好きという人も増えますが、当然嫌いという人も増えます。しかし好きという支持率が1%であっても1億人に認知されると100万人が好きということになります。故にインフルエンサーと呼ばれる人の中には悪名は無名に勝ると敢えて炎上させる発言をして仕事につなげる手法をとる人もいます。
　私たちの医療業界においては古くはTVに出演している医師はたいしたことがないという風潮が一部にあったかもしれません。しかし現在、医療に費やす時間がないほどのタレントのような医師を除くと時代は変化しており、TV出演はともかく情報発信においても私が開業した約15年前でさえ、自院のホームページを開設することも当たり前になってきていました。現在健康番組などに医師が出演することは珍しくなくなり、病気について一般の方に正しく理解してもらうには大切なことだと考えます。医療類似行為や健康食品など利益追求を第一とした必ずしも正しくない医療情報も溢れていますので、注意が必要です。
　私は正しい情報発信のためならと開業後マスコミ関係に請われた場合、診療の妨げにならない範囲でTV、ラジオ、新聞、インターネット動画などに関わってきました。それが結果として私の認知度を高めることにもなりました。認知度が高まると何処へ診察に行っても治らなかった病気も治してもらえるなど過大な期待がかかることがあります。治療経過をうかがい、私と同様な方針の場合、遠方なら現在かかられている先生の治療を継続していくのが良いと思いますよと伝えてガッカリされたこともあります。
　良い面として取材をうけたインターネットTVで政治家、スポーツ選手、タレントなど有名人、著名人の中で私の動画が男性1位に輝いたことには驚き、実感はありませんでしたが、おそらくほとんどの方が経験できないような貴重な体験やオファーを受けることになりました。ありがたいことでしたが、そのオファーのすべてを受け入れることはしませんでした。1例をあげるとアメリカンフットボールの危険なタックルがニュースになった際に、18時からのニュースで放送したいので、それまでに取材を受けて欲しいと午後診直前に電話がかかってきました。試合のVTRも見ていませんでしたので、さすがに丁重にお断りしました。経験上20分程度ですと伝えられても取材時間は延びる傾向にあります。
　受診された患者さん全員から高い評価を受けることは大変難しいことです。しかし最初から100%を目指さないのはプロ失格です。常に100%を目指すのは大切だと考え、これからもベストを尽くしてまいります。