2019年11月号 ソワレの終わりに
2019/11/13
11月19日朝7時15分〜日本テレビ「ZIP!」特集に当院と提携しております山田朱織枕研究所の山田朱織先生が出演されるというメールが届いていた。Wカップで活躍されたラグビー日本代表の田中史朗選手・松田力也選手の睡眠方法を山田先生が診断するという内容です。ちなみに松田選手は整形外科枕を愛用されているそうです。12月13日(金)の枕計測日のご予約はお早目に。この日は昼休みに区民健康講座の司会もある。
今年も11月になり、11月1日からは福山雅治・石田ゆり子主演の「マチネの終わりに」が劇場公開された。芥川賞受賞の平野啓一郎原作の作品ですが、タイトルにセンスがあり、内容も他の作品より一般受けするのではないかと思います。「マチネ」はフランス語で朝・午前の意味。演劇や音楽会で「昼公演」のことです。対して「ソワレ」は夕方・日暮れ後の意味で、「夜公演」のことです。映画も観たいですが、今月は線維筋痛症の講演会、一般向けの認知症の講演、医師会旅行や来月も忘年会とスケジュールがどんどん詰まっていく。
最近「治る」とはどういうことかとよく考える。骨折が治る、傷が治るという場合患者さんと医療者の認識に大きな違いはない。しかし腰痛などの場合軽快しても、半年後にまた痛くなることがある。半年間症状がなければ、一般的には一度治ったが、また腰痛になったと考えるべきで、これは風邪をひいて、治ったが、また風邪をひいたという状況と同じで、最初の治療が適切でなかったことを意味しないと考えます。
しかし患者さんの中には前回撤退的に治さなかったから、また腰痛になったとご自身を責められる方がありますが、これは風邪をひいて治りきらないうちに無理をして、風邪が長引いたという状況とは全く異なります。残念ながら風邪も腰痛も一度経験したら二度とならないというものではないことは自明でしょう。
また整形外科には「痛み」を主訴として受診される方が多く、腰痛にしても一般的な大半の腰痛は慢性化せず、痛みが軽快すればよいが、腰椎椎間板ヘルニアや圧迫迫骨折や癌の腰椎転移など、あるいは内科、婦人科疾患による可能性も考えて整形外科医は診断をしています。内科的な腹痛や腰痛の場合、単なる鎮痛は診断の妨げになる場合があります。このようなことをイメージして、整形外科領域の心配がいらない腰痛に対しても、痛みをとるだけですかという疑問を持たれる方があります。手の痺れた方のすべてが脳梗塞でないのと同様、身体が持つ自然治癒力と薬物等のサポートで治る状態も多い。基礎疾患がなくても、腰痛になることが大半です。日本の医療費を考えると患者さんが心配されるすべてを除外するために検査を行うのではなく、必要のない検査を診察で見極めるのも我々医師の仕事であるし、健康に対する過度な取り越し苦労はかえって患者さん自身を苦しめる。「経過を見ましょう」は何も検査や治療をしないということではなく、人が持つ自然治癒力で軽快する状態で、重篤疾患でないと医師が判断している場合が多いのである。今日はこのようなことを「ソワレの終わりに」考えながら家路についた。