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2022年10月号 闘魂伝承

2022年10月号 闘魂伝承

2022/10/17

 今年に入り私の人生に大きな影響を与えた2人の人物が亡くなりました。京セラ創業者の稲盛和夫氏とプロレスラーのアントニオ猪木氏です。お二人とも生前、「燃える闘魂」をキャッチフレーズや著書のタイトルにされていました。デビュー戦敗戦や大学受験失敗など、10代では必ずしも頭角を表していないことや、また若くして独立されたことなど共通点がたくさんあります。活躍が長期間にわたることも特徴で、時代の寵児のような一発屋ではなく、稲盛さんは第二電電(現KDDI)も創業し、また近年ではJALの再建に尽力されました。企業経営を成功させるだけではなく、利他の精神を説かれていました。
 猪木さんもプロレス引退後に参議院議員としてイラク人質解放などで活躍されましたし、志半ばとはなりましたが、世界のエネルギー問題に取り組み、晩年は闘病生活を公開し、死の直前まで私たちにサプライズと元気を与えてくれました。体罰が厳しく禁止されるようになった現在、ビンタして闘魂注入と感謝される存在であった猪木さんは特別でした。
 お二人ともレールの上を安全に走りきった人生ではありません。未開の地を切り拓くような人生だったと思います。高すぎた長距離電話料金をさげることができれば国民のためになると、巨大なNTTの独占であった業界に新規参入して成功した稲盛さんは日本を代表する大企業を2社も興したことになります。また猪木さんは圧倒的に不利なルールにがんじがらめにされていることが世間に周知されていなかったため、酷評されたモハメド・アリとの異種格闘技世界一決定戦は、後年高く評価されるようになりました。当時はアリへのギャラなど20億ともいわれる多額の借金を抱えるなど大変でしたが、世界で最も影響力のある人物の1人であったボクシング世界ヘビー級チャンピオンのアリと戦った男として世界的な知名度を得たうえに、戦いを通してアリとの間に友情が芽生えました。国や人種やバックグラウンドが異なる人物やかつて自分を裏切った人物をも受け入れ交流してしまう度量があった猪木さんは稀有な人物でした。
 お二人が経験された前例のないチャレンジや会社経営上の様々なスケールの大きいトラブルに比べると私が日常的に遭遇する困難、試練は大したことではないなと感じます。困難に直面した際、もし稲盛さんや猪木さんならこういう場合どうするのかなと考えます。きっと困難でもやり甲斐がある方を選択して、明るく、そして死力をつくして問題解決にあたられる姿がイメージできます。必ずなんらかの突破口はあるはずです。私自身これから国会議員や実業家、プロレスラーになるわけではありませんし、お二人のような偉業を達成することはできませんが、医療の分野において、微力ながらもその志は受け継いでいきたいと考えています。
 燃える闘魂よ永遠に。