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2014年2月号 『笑いのカリスマとの遭遇』

2014年2月号 『笑いのカリスマとの遭遇』

2014/11/27

圭一は改札を抜けてタクシーを拾うとKテレビのスタジオに向かった。
人気カリスマ芸人Sの番組に出演するために、眼科の卒業試験を早めに退出してきた。番組の企画はミスO大学歯学部の彼氏を決定するというものだった。圭一はK大学医学部6回生で、この企画に友人と応募した圭一は数百人の応募の中から最終5名に残っていた。若手芸人コンビDが、控室で圭一ら素人参加者に収録の進行具合を説明していた。圭一の収録の時がやってくると、Sは圭一に興味を持ち、卒業試験の期間中にテレビの収録にくるとは、バカか大物どちらかだと思ったらしい。圭一とSとの会話はテンポよく進み、Sが当時参戦していた鈴鹿8耐に翌年ドクターとして参加するような流れになった。会場(番組見学者)の雰囲気も良く、圭一はあのSから笑いをとったことに満足し、スタジオから控室に向かうと、ゲストのW尾いさ子さんとすれちがった。終電がなくなりそうだし、どうやって帰ろうかと廊下を歩いている圭一に、コンビDSからのメッセージを伝えにきた。Sの収録が終わるまで待っていてほしい。カメラのまわってないところでイベントをやろうという内容だった。参加すると芸能界に足を突っ込むことになると感じた圭一は学生の本分は勉強(?)と丁重に断り、帰宅する旨伝えると、最初は俺たちの顔を立ててくれといっていたコンビDも諦め、圭一の後をテレビ局の玄関までついてきて、制限金額なしのタクシーチケットと番組特製テレカを圭一に渡し、最敬礼で見送ってくれた。約2週間後卒業試験はまだ続いていた。圭一はサプライズを演出するため、同級生にテレビ出演を黙っていた。オンエア翌日放射線科の試験に圭一が行くとかなりの数の同級生がテレビをみており、圭一に卒業試験、国家試験合格のプレッシャーがかかることになった。そのプレッシャーこそ圭一が求めていたものであった。大学受験の際、日本中の猛者が集結する試験会場で圭一はプレッシャーのため目前にあった栄光をつかみ損ねていた。今はあの頃の圭一ではない。退路を断って、自らプレッシャーの中に身を置き勝負する舞台は整ったー

 あれから20年経つ。コンビDは少しは売れた。諸事情でSは芸能界を去った。圭一は卒業試験も国家試験も無事合格し、東灘区で整形外科医をしているらしい。

この話には実在のモデルが存在します。大筋ノンフィクションです。