2018年7月号 明るい未来を切り拓く
2018/07/10
必勝パターンを複数持つことは困難で、多くの人は先行逃げ切りをはかることが一般的である。幼児教育や早い時期にスポーツや音楽を習い始めることが、これにあたるのでしょう。スポーツや音楽の分野や最近話題になっている将棋の藤井七段など将来大成するであろう人の多くは10代で頭角を表すことが多い。ただ一般社会では先行逃げ切りは過去の遺物といってよいのかもしれません。終身雇用の時代ではなくなり、技術革新がおきるとこれまでの価値が一変することがしばしばおきる。医師になったから、一流企業に入ったから後は安定ということが言えない時代にすでに突入しているのでしょう。現在欧米の大学入学などで重視されているのは、挫折からいかに立ち上がったかという経験です。すべて欧米が優れているわけではないけれど、日本は減点主義で思い切ってトライすることに臆病になっているような気がします。先行逃げ切りで優位にいる人ほど保守的で失敗を怖れる傾向が強い。そこからは新しい考えやドラマティックな逆転劇は生まれない。
4月に長男の入学説明会に参加しました。昭和の時代に医学部に入学した私の頃と比べると勉強が大変そうで、一年生からかなり勉強が必要で、国家試験にも毎年1000人程度が不合格になります。受験総数が10000人程度であるので約10パーセントが不合格になる計算です。入学してもすぐ勉強なので受験勉強で燃え尽きてしまうようではいけませんから、極一部の超優秀層(その気になればほとんどの医学部に合格できる学力がある受験生)以外は大学のブランドにこだわるより入学できる大学に入るのが現在では大切なような気がします。どこで学ぶかよりどう学ぶかです。アルバイトに精を出したり、卒業試験期間中にバラエティー番組に出演したりするぐらいの余裕があるほうが、臨床医としては人間として魅力的という意見もあり、メディアには取り上げられやすいですが、下手すると留年します。
学生時代、特に受験生の時代に様々な試練がありました。そこで私が身につけたものはレジリエンスすなわち困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力です。これは危機管理能力、リスク対応能力の視点からも重要です。今後10年世界も医療業界も大きく変わるでしょう。人間は元来変化を嫌う性質を持っているので、多くの組織、人間にとって生きづらい世の中になるのではないでしょうか。これまでの成功体験や無意味な個人のこだわりは意味をなさなくなります。嫌々変わるより自ら変わった方がアドバンテージは大きい。
開業10周年を迎え振り返ると、色々な困難や試練もありましたが、家族の協力や当院スタッフを中心に人に恵まれ、やってこれました。皆さまに感謝します。これから10年は大変な時代になるでしょう。しかし僕はこれまでの人生で、どんな困難にも屈しない回復力を身につける機会に恵まれました。むしろどんな困難がくるのか今からワクワクしています。変化し挑戦する者だけが翼を得ることができる。