2018年8月号 コード・ブルー
2018/08/17
現在クリニックで僕が着用しているスクラブはドラマ「コード・ブルー3rdシーズン」で山Pこと山下智久とガッキーこと新垣結衣が着用しているものと同じだそうです。当院が開業した10年前に放送が始まり、その後人気ドラマであるため、映画化され、現在劇場版コード・ブルーが上映中です。ドラマ放送はリアルタイムでは視聴していませんでしたが、今年再放送でまとめて視聴して、よく出来たドラマだと感じました。多くの医療ドラマでは天才外科医が難手術を成功させたり、勧善懲悪の世界があったりしますが、現実はそうシンプルなものでなかったりします。コード・ブルーではドクターヘリに乗る若手救命医の成長をえがいていますが、救命医が出動する現場では重症者が優先されるが、助かる見込みが無い患者さんには処置を中止し、一人でも多くの命を助けることが義務となる。若手医師は可能なら全ての命を救いたいと考えるが、判断を誤ると助かる命も助からない悲劇が起きる。そして現場では何が最善か判断が困難なことも多い。
僕が医学部に入学する前に悩んでいたことの一つがそこにはあった。治らない病気や事故により救えない命がある。その現場に直面した時に僕は救えなかった命のことをクヨクヨずっと考えてしまうのではないかということを心配していました。感受性が強く、すぐに切り替えることなどできはしないだろう僕は医師には向いていないのではないか?と将来を案じていました。大学入学前に答えが出せなかった僕は、でも先ず医師の世界に飛び込んでみようと思いました。医師になった時も先ず5年やろう。そしてどうしても医師に向いていなければ、すっぱり医療の世界から足を洗おうと考えていました。世間にはどんなことをしても子供を医師にさせたい親もいるし、社会的地位も高く、それなりに収入もある職業ではありますが、当時の僕にとってはそんな事実は重要ではなく、自分が不向きなら医師という職業にしがみつく気持ちはありませんでした。でも医師になってから僕はいろいろなことを学び、経験し強くなったのでしょう。成長したのだと思います。そして今僕は医師に自分は向いていると信じて医師をしています。僕が医師に向いているかどうかは自己評価より最終的には患者さんが判断されることだと思いますが、僕は医師が我が天職と感じ、1月のみみよりつうしんでも記したように宝くじで10億円あたっても今後も医師を続けます。
僕は他人には見せないようにはしてはいますが、未だ治らない病気に対する無力感や救えなかった患者さんに対する想いを胸の奥にしまって医師をしています。これは僕だけではなく、ほとんどの医師が思うようにならなかった過去を抱えて現在を生きているのだと思います。「コード・ブルー」を見て昔の自分の悩みを思い出しました。
映画の設定でも10年が経過して山Pやガッキーも今や若手救命医を指導する立場にあります。フジテレビや山Pから宣伝して欲しいと頼まれたわけではないけれど、リアルな現場に近い作品として「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」を映画館に観に行きたいと考えています。