2020年3月号 感染予防は正攻法で
2020/03/11
学生時代地元の進学校で一番になる実力があった私ではありましたが、常に都市部の進学校ではどんな勉強をしているのだろうと、情報格差を気にして、不安になっていました。しかし大学に合格してわかったことは、特別な勉強法はなくて、例えば数学だと誰もが知っている青チャート程度でも受験生全体からすると本当にしっかりすべてを理解している人は少ないのではないかということです。参考書を持っていることと理解していることは違います。大学受験の時は多くの最高レベルの参考書に手をつけて結果、実力がつきましたが、合格することだけを考えると効率が悪く、7割正答で合格する試験で9割正答するのはやはり地頭が関係していて、これはどんな参考書で勉強したかより、どう頭を使ったかという世界です。
今回の新型コロナウイルスに対する情報もデマが出回りました。27度の水を飲むとよいなど根拠のない情報で、それが信頼できる筋からという話で、人々の善意や不安が相まって瞬く間に拡散したようです。これは受験生が不安になる心理と似ているために起こるのではないかと思います。不安が強いと冷静な判断ができなくなります。未知の感染症であれ、対処法は人混みをさけることや、手洗い、うがいは有効で、栄養、睡眠が大切で免疫力が落ちないような生活が大切ということは言われてみれば当然で目新しいものはなく、すなわち青チャートの例題レベルです。しかしたかが青チャートといえるのは、制限時間の半分でセンター試験の数学で満点がとれるような受験生くらいで、受験生全体からすると数パーセントも存在しないでしょう。100パーセント試験に合格する方法がないのと同様100パーセントの感染予防というのはないのでしょうが、これをやってはダメということはあります。マスク不足は深刻ですが、その使用法や目的をきちんと理解することの方が、むしろ大切です。何が本質かを理解することが大事で、マスクの使用など新型インフルエンザの経験が全く活かせていない人も多数存在します。
感染症に対する基本的な考え方が身についていれば、すなわち誰にでも入手できる青チャートが理解できれば、初見の感染症(問題)でも合格点は取れると思います。今、国が目指している入試改革も本来こういうことなのでしょう。たくさんの知識を蓄えていることが大切なのではなく、本当に大切な原理、原則を身につけ(けっして多くない)、初見の問題を既知の問題に引きつけ、解決していく頭の使い方を学ぶことが大切ということです。余談ですが医学部に関しては今も昔も膨大な知識の暗記は必要で地頭だけでスイスイと数学を解くようにはいきませんが、医師を目指す上で誰もが通る道です。
私たちは9年前に東日本大震災を経験し、「絆」という言葉が盛んに使われるようになりました。昨年はONE TEAMに歓喜しました。しかし昨今のマスク転売やドラッグストアの店員さんに対しての心ないクレームの量、質など利己的で自分本位な言動の報道があります。また感染された方への差別的な言動や事実無根の風評被害もあります。これはごく一部の人だけの行動と信じたいのですが、少数でもあちらこちらでこういうことをされるとみんなのストレスがたまります。不安や不満があっても人間としての品格を失ってはならないのである。