2020年10月号 人を叱るときの心得
2020/10/13
ミスターラグビー故平尾誠二さんは人を叱る時の4つの心得として「プレーは叱っても人格は責めない」「あとでフォローする」「他人と比較しない」「長時間叱らない」を挙げておられます。神戸製鋼での日本選手権7連覇をはじめ、高校、大学でも日本一に輝いた実績を持つ平尾さんの言葉は非常に重い。それぞれの言葉について考えた事を書いてみます。
プレーについて叱り出したはいいが、叱る人間が人格を責めたり、以前の事を持ち出したりすることはよくあるのだろう。叱る人間が怒ってしまった時にこういう状況になる。
叱ることの目的はプレーの改善にあるのだが、叱られた人間がやる気を無くすようなら、逆効果である。そのためにも叱る際にも長所を褒めることとパッケージにするか、あとでフォローすることが必要です。
また他人と比較しないという言葉は多くの場合は優れた人と比較しないという意味で使われるが、それ以外に自分の後継者と考えた人間には評価のハードルをあげて期待を込めて他のプレイヤーにはしない指摘が必要なことがあるのでしょう。一つ一つのプレーだけではなく、大局を見るという能力を養うためです。
長時間叱らないというのはその通りで対話が成立していて時間が長くなるならともかく一方的に叱られると、最初は素直に聞いていても、そこまで言わなくてもとなったり、焦点がぼやけてしまったり、辛くなって言葉が耳に入らなくなったりします。
大切なことは目的が何かということです。どう改善するかということを理解して、行動してもらうことであって、けっして叱っている側がいいたいことを何でも話して、ストレス解消の場になってしまってはいけないということです。
ラグビーの場合はプレーを全てビデオで録画することができますが、日常生活の場合はもう少し複雑な面があって、客観的に明らかな事実をもとに話すようにすることです。推測や偏見が強すぎてはいけませんし、相手が事実を覚えていないと、言った、言わないの低次元の話になってしまいます。
大切な事は叱る側が自分の感情をコントロールし、俯瞰的に物事を見れることで、平尾誠二さんは上記のようなことができる優れたリーダーでした。平尾さんの著書はほとんど読みました。実績十分で魅力的な人物であった平尾さんの言葉に耳を傾ける人は多くとも、時代の先を進んでいた平尾さんがさらに評価されてるのはこれからだったはずです。そして平尾さんが亡くなった後、昨年ラグビーのW杯が日本で開催され日本チームが大躍進しました。現在の日本チームはレベルもあがり、素晴らしい選手は沢山います。しかしいろいろな意味で影響をうけたという点で私の中でミスターラグビーと呼べるのは平尾誠二ただ一人である。