2021年5月号　新型コロナウイルスワクチン集団接種に出務してきました

　新型コロナウイルスワクチン接種が本格的に始まっています。5月16日兵庫区役所みなとがわホールでの集団ワクチン接種に出務してきました。私自身は2回のワクチン接種がすでに終了していますので、これからは可能な限り、集団ワクチン接種に協力していきたいと考えています。前日15日の朝8時20分頃に出務確認のお電話を責任者からいただきました。出務は9時から18時30分までの9時間30分のうち12時30分から18時30分の6時間です。兵庫区医師会から2名、東灘区医師会から2名の出務でしたが、兵庫区はほぼ3時間ごとに3分割されていました。担当者が気を使ってくださり、落ち着いていれば、16時から30分ほど休憩してくださいと促されましたが、トイレ休憩のみで接種しました。最後は18時15分頃に兵庫区医師会の出務された先生のご好意で出務終了となりました。

　全体として接種会場に混乱はなく、医師サイドからすると、かなり余裕を持ったスケジュールでしたので、6時間勤務といっても比較的楽でした。通常の診療の方がはるかにハードです。内容は簡単な問診と接種のみで医師の業務内容は新たに覚えたりすることはなく楽です。

　会場のオペレーションでも医師は特に判断力がいるわけではありません。ナースの方は2時間ごとに3人のナースがついてくださいました。専門職なので一定以上の知識と技量をお持ちだと思いますが、オペレーションの点では少し差がありました。しかし大きな影響はありませんでした。

　今後どのような予約スケジュールになるのかは私の関与するところではありませんが、ドクターの業務内容から判断すると2倍の接種は可能だと感じました。ただ接種後の待機スペースの関係もありますから、そのあたりの配慮、工夫は必要ですし、2倍こなすとなると出務医師確保のため土曜日、日曜日の勤務はきちんと3分割した方が良いと思います。

　一部で接種が順調にすすまないのは開業医の協力がないからという論調があります。しかしこれは間違いだと断言できます。これまではワクチンそのものが不足していましたので、集団接種等に出務する意思があってもその機会がありませんでした。また神戸市では5月17日からは各医療機関での個別接種が始まります。国民の多くはこの緊急時にはすべての医療機関が何らかの形で、ワクチン接種に協力すべきとの考えでしょう。当院では個別接種は行わず、私が集団接種に出務することで貢献することにしております。今月にもう1回兵庫区出務と東灘区御影公会堂に3回出務します。当院スタッフは通常の診療勤務のみで、直接新型コロナウイルスワクチン接種に関与する機会はないかもしれませんが、日々の業務に全力を尽くして欲しいと思います。

　出務してよかったことは接種を受けられ方より大変感謝されたり、激励のお言葉を数多くいただいたことです。また接種に関しても「全く痛くなかった」「もう終わりですか？」という感想をいただきましたが、これは筋注は痛いという先入観があるからだと思います。注射そのものは痛くなくても、翌日にかけて接種部位の筋肉痛は多い副反応ですので、ご注意ください。

　今回出務してみて感じたのは、出務されているスタッフの皆さんがおそらく休日返上で、懸命に取り組んでおられました。報道では負の側面が大きくとりあげられますが、自治体や医師会の取り組みが接種スケジュールの遅れる要因にはならないと信じます。戦略のマイナスを戦術でなんとかしていこうという状態です。戦なら負け戦になるのでしょうが、それを多少の負荷はかかろうともなんとか巻き返していこうというのが、今の日本です。各自治体ごとに事情は異なります。接種のスピードももちろん大切ですが、分断がおこらず、地域が一体となって取り組むことが大切なのだと思います。そしてどんな計画も100点満点はないので、不満ばかりとなえるのは愚かではあるけれども、建設的な意見には耳を傾け、より良いシステムにしていくことが、短期的にも、中長期的にも必要なのだと思います。