2022年8月号 優れたリーダーとは
2022/08/18
新型コロナウイルス対策として感染者の全例把握の見直しに向けた検討を厚生労働相が行うようです。自治体や医療機関からの要望によるもので、保健所や医療機関に事務的仕事の負担が重くなっているからだといわれています。しかし本来なら、全例把握により得られるメリットが少なくなっていることが、理由にあげられるべきです。第5波あたりまでは、どのような年代が感染したり、重症化しやすいかを調査し、ワクチンの有効性など対策を立てるために意義があったと思います。しかし第6波で重症化リスクが低くなりました。行動制限緩和に舵を切ると同時に、ゴールデンウィーク明けに感染者数が増加しなかった段階で対策のさまざまな面の見直しを検討開始してもよかったのではないでしょうか。しかしそうならないことは第6波が始まった頃より見えていましたので、そのつもりでさまざまなな計画をたてていました。7月に参議院選挙がありましたので、選挙前に賛否が割れるような見直しを政府が行うとは到底思えませんでした。またこのまま第6波で終息するかのような根拠のない期待に支配されていた節があります。一般の方がそう期待するのは無理もないのですが、私たち医師や政府や自治体がそのようなことではいけません。危機感をもって準備を始めたり、いろいろな面(2類から5類への変更など)の見直しを開始していても間に合わす、現在の感染状況に変化はなかったかもしれません。しかし第7波の初期、楽観的すぎる初動だと私は感じ、医師会のアンケートでもその旨述べました。
第7波に入ってからも高齢者以外はインフルエンザと大差ない重症化リスクとさかんに説明されていましたが、特に守るべきは高齢者ですし、感染力が強くなると当然感染者も増えます。そうすれば死亡者や重症者も増えますし、重症化率が低くとも感染が継続すると、結果として、病床も逼迫します。火を見るより明らかなことを理解されていないのか、あるいは自分の見たくない現実を認めないような言動をされる方が残念ながら医師の中にも存在します。
重症化する患者さんが少なくなったとしても、現状の濃厚接触者も隔離するルールを継続するかぎり自宅待機の医療者が増え、医療崩壊は当然起こります。休業に追い込まれる店舗や9月に新学期が始まる学校では学級閉鎖や学年閉鎖なども日本全国でおきるでしょう。そんな状況であれ小林整形外科クリニックはベストを尽くします。仮に少ないスタッフ数でシフトを回す状況になっても休診にすることなく業務を行えるよう日々改善を行っていきます。
優れたリーダーとは、切羽詰まって物事を決めるのではなく、早めに白黒がはっきりしない段階で判断ができ、後にそれが正解だったと認められる人です。もちろん人間ですから間違った判断をしてしまうこともあります。しかしそれを怖れて意味なくズルズルと結論先延ばしはよくありません。また決断力があっても見通しを外しまくるセンスのない人も多くいます。言わなくともよいのにわざわざ行事を決行、決行と連呼し、いざとなったら中止というのは、暴走してしまうよりはマシですが、信念も感じられません。周りを振り回してしまうという意味ではもう結構なのである。
スポーツや将棋など勝った試合にも改善点があります。トッププロになれば、敗戦さえ次に活かすことができます。将来感染が収まって、誰も新型コロナに対して話題にしなくなっても国や私たち医師はしっかり総括すべきであろう。その際政府や医療従事者サイドからだけの一方的な成果、業績報告だけでは不十分で、上手くいかなかったことは何なのか、改善点は何かを検証しなければならない。また緊急時は何を行ったかだけに目を向けるのではなく、何をやらないと決めたかも重要で、そのあたりがないがしろにされるようでは意味がない。新型コロナウイルス対策は政治家や医師会員のポイント稼ぎであってはならない。明るい未来のために貴重な糧とすべきである。